【第二回】薬剤師×大学教授。求められるチーム医療、その中で薬剤師はどう関わっていくのか話し合いました。
マイタウン薬局では、「チームで働くこと」を
第一に考えています。
「チームで働くこと」とは、どのようなことでしょうか?
また、そのために心掛けていることとは。
大先輩であるマイタウン薬局顧問の伊藤先生と
金城学院大学教授の網岡先生。
かつて一緒に薬剤師として病院で働いたことのあるお二人が、今までの経験を通じて本当に何が大切なのかを語り合います。
interview : Yumico kojima
マイタウン薬局へ入る選択、それはいつ?
Interviewer―先生が学生に勧める就職先は?
網岡先生:マイタウン薬局の皆さんの前で言うのも難しいのですが…。でも、私の研究室の学生にはまず病院に入ってチームの大切さを学べと言っています。いつまで働くか分からないから、基本的なことを病院で学んで、その後は自分の働き方を考えて薬局でも好きなところに行けば良いとアドバイスしますね。
伊藤先生:私も同感です。
Interviewer―基本的なこととはどんなことですか?
網岡先生:今はチーム医療がとても大切だと考えられています。どんな単位にせよ、医師や薬剤師、その他のメンバーそれぞれの知識を持ち寄って問題を解決していくことが必要とされます。病院ではまず、そのチームで動くことの基本が比較的スムーズに身につきます。
病院ではそのチームメンバーが院内にいるのです。もちろん医師がトップでチームが構成されていますが、病院幹部からの要請があれば同じ組織として動かざるを得ない。
例えば、人が足りないとか現場ではごちゃごちゃ言っていても、幹部からの一声で呼ばれれば「はい!」と従わざるをえない。でもその代わり、ある程度の保障もしてくれるわけです。
同じ職員であれば身内も同然なので、上手く進めるために前向きに仕組みを作ろうと調整します。
ということは、段取や調整にそこまでパワーを掛ける必要なく、やることの本質を学べる。
その経験を持ってすれば、その後どこへ行っても応用が効くはずです。
ただ、病院には転勤があったり、夜勤があったり、労働条件として合わなくなってくることもある。そういった時に、例えば勤務形態の合うマイタウン薬局さんに転職したって遅くはないし、マイタウン薬局さんにとっても良い人材に育っていると思うんです。
伊藤先生:確かに、そういう経験者がいれば在宅でのチーム医療にも手を出しやすいです。実際、私も病院で長いこと薬剤師を経験して来て、60歳を過ぎてマイタウン薬局に就職したのですから(笑)。もちろん、進めたいことがマイタウン薬局でなら実現出来るという期待を持ってのことですが。
あと、マイタウン薬局へは、まずは病院で働いてから来てくださいとまでは言い切れませんが、それほど、チームで働くことを大切に考えているし、チームで働く意義を考えられる薬剤師を求めています。
薬剤師として、スペシャリストか?ジェネラリストか?
網岡先生:ただ、チーム医療と言っても2つあります。そこを混同してしまうと、町の薬局が違う方向に進んでしまうので説明しておきますね。
その2つとは、スペシャリストなチーム医療と、ジェネラリストなチーム医療です。
スペシャリストとは癌のみを研究している人とか、専門的な分野に特化している人のことです。逆にジェネラリストとは、総合的に広く浅い知識を持っている人のことです。
病院の中でも、スペシャリストな薬剤師(専門薬剤師)にしかできない臨床が求められる場面がたくさんあります。医師も薬剤師も専門性がある者を上に見て、そうでない者は落ちこぼれなんて言う時代もありましたね。
Interviewer―医師に専門があるのは知っていましたが、薬剤師にもあるのですか?
伊藤先生:それが専門薬剤師です。専門のチームに入るためには資格がいりますが、そんなに多くの薬剤師がいるわけではありません。
網岡先生:大学病院では特に、スペシャリストなチーム医療がもてはやされる風潮でしたが、現在は状況が大きく変わってきたと感じますよ。
医師も薬剤師も同じで、ジェネラリストのチーム医療が多く求められるようになりました。
患者さんがいればその問題点を見つけて解決していく。そこに感染症や疾患があろうが関係なく、その患者さんのために総合的に皆で集まってまずは進めていくのです。頭も痛ければ足も痛い、ついでに目まで…、という患者さんに専門外は診られないとは言いません。総合的に判断するということは、幅広い知識が必要とされるわけです。
実際に、前回(平成24年度)の診療報酬改定で、病棟薬剤業務に点数が与えられました。これはやはり、病院自体も、ジェネラルな薬剤師を必要としていると言っていい流れですね。
なので、大きな病院の前に頼るべき町のかかりつけ医や薬局に求められるのは、ジェネラリストとして問題を解決できる能力だと考えます。
Interviewer―学生はどちらの薬剤師をめざしているのですか?
網岡先生:過去に癌専門の病院にレジデントに出した生徒が、就職先にそこを選ばなかったことがありました。
なぜかというと、毎日毎日癌専門の薬を扱うのですが、糖尿病や白内障の患者さんに対しての薬はどれを聞いても分からない。これではダメだと思うと本人が感じたと言います。専門は後でいいから、まずは総合的な知識を学べる先に就職したいと都内の総合病院に結局就職しました。
私は、てっきり癌の専門病院で研究所に入って専門薬剤師を取るとばかり思っていましたから、最初は驚きましたけどね。そういう時代になってきているのです。
絶妙なバランス感覚を持って。
Interviewer―これからの町の薬局に必要なこととは?
網岡先生:先ほど、かかりつけ医にジェネラリストが求められていると言いましたね。逆のことを言っているように思われるかもしれませんが、マイタウン薬局さんも、差別化するのであれば敢えて興味のある分野を持つことは必要かと思います。もちろん、専門性とまでは言いませんよ。
何ごともバランスが必要で、そこが特徴になり得るかもしれませんね。
伊藤先生:そうですね。総合的な広い知識を持った上で、様々な経験を積んできた薬剤師が集まって、何か得意分野を持った薬局となれば更に地域に必要とされる薬局になるのではないかと思います。
続く
- 伊藤一弘
- 国立名古屋病院から始まり、病院での薬剤師業務に従事。平成27年3月独立行政法人国立長寿医療研究センター薬剤部薬剤部長を定年退職し、マイタウン薬局へ。現在はマイタウン薬局顧問、新しい取り組みへの足がかりとして様々な活動を行っている。
趣味:釣り、スポーツ観戦、映画鑑賞
モットー:和
- 網岡克雄
- 金城学院大学の薬学部新設を手掛ける。大学教授である現在に至るまで、医薬品メーカー、救命救急センター、厚生省、調剤薬局など多くの経歴を持ち、様々な現場で薬剤師として活躍。
趣味:ゴルフ、合唱(栄ミナミ男声合唱団所属)
モットー:人生で起こる全てのことは、ベストのタイミングでやってくる(良いことも悪いことも)会うべき人に会い、行くべきところへ行ってベストを尽くす、これが人生。