【第一回】薬剤師×大学教授。変わってきた調剤薬局の役割、必要とされる薬剤師像を話し合いました。

【第一回】薬剤師×大学教授。変わってきた調剤薬局の役割、必要とされる薬剤師像を話し合いました。

「薬剤師に期待されることって何ですか?」
先日、マイタウン薬局では学生から
こんな質問を受けたと言います。
思いやりと、当たり前のことを当たり前に―。
今のマイタウン薬局が大切にしていることを
答えたのでしょうか。

大先輩であるマイタウン薬局顧問の伊藤先生と
金城学院大学教授の網岡先生。
かつて一緒に薬剤師として病院で働いたことのあるお二人が、今までの経験を通じて本当に何が大切なのかを語り合います。

interview : Yumico kojima

病院薬剤師といえば、薬剤科内業務だけをすれば良かった時代。

Interviewer―お二人の関係は?

伊藤先生:30年以上前かな、国立名古屋病院(現在の国立病院機構名古屋医療センター)で一緒に働いたのがきっかけですね。

網岡先生:私が無給で働いていた時代ですね(笑)。あの時代は職員の定数がいっぱいになっていて空待ちで、4人も5人も私の前に待っている状況でした。結婚して間もなかったので、無給とは周りに驚かれながらもやってましたよ。

Interviewer―実際はどのようなお仕事をされていたのですか?

網岡先生:以前は院内処方だったので、毎日処方箋を一日平均1000枚以上調剤していましたね。

とにかく時間がなかった…。

それでも、上からは病棟訪問しろと言われ、午前中は調剤し、午後から病棟に出る努力をしていました。今考えると、しんどかったなぁ。

伊藤先生:昔の病院はとにかく処方箋を調剤することだけに忙しくて、どの病院でも薬剤師が直接患者さんと時間をかけて話をすることなんてなかった。薬を渡すのが精いっぱいの時代でした。

それでも当時の国立名古屋病院はまだ進んでいて、入院に関しては今のカタチに近かった。薬剤師も臨床に力を入れていて、とにかく患者さんの状況を直接見ることが大切とされていましたからね。

Interviewer―今では当たり前のことなのですよね。

伊藤先生:最初は病棟進出という言葉を使ったが、それはおかしいと言って病棟訪問と言ったくらいの時代ですよ。他の病院と情報交換しても、「病棟に行って何をするの?」と聞かれることが多かった。

それほど、病棟に薬剤師が出ることがなかったのです。ほとんど院内処方だったから、一般的に薬剤師の仕事と言えば薬剤科内で行う業務、内服・外用・注射剤調剤、院内製剤、薬品管理、医薬品情報管理等の業務で精一杯だったのでしょうね。今みたいにたくさんの調剤薬局もなかったですし。

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重みの違う感謝。本当の「かかりつけ」の役割とは?

Interviewer―網岡先生は、メーカー、病院、行政、調剤薬局、今は大学と、たくさんのお仕事を経験されていますが、一番薬剤師として充実していた時代はいつですか?

網岡先生:それぞれのやりがいがもちろんありますが、薬剤師として言うなら病院で働いていた時かな。

Interviewer―それはなぜですか?

網岡先生:簡単に言えば、「感謝される」からです。

先生ありがとうと直接声がかかりましたね。自分の痛みがとれた、治った時の感謝の重みは違って、ストレートに響くから次もがんばれる。その繰り返しで毎日大変でも使命感を持って働いていました。

それでいくと、病院だけでなくかかりつけの薬局も、今では同じやりがいを持てると思いますよ。患者さんが直接困ってやって来るのだから。

伊藤先生:まさにマイタウン薬局では、昔の薬店のようにもっと薬剤師が直接患者さんに対峙していくことが必要だと考えていますよ。

網岡先生がおっしゃった、重みの違う「ありがとう」を、感じられる仕事であるべきですよ。

ただ現状は処方箋の通り調剤し、正確に薬を渡すだけの役割だと大部分の患者さんにも思われていて。いや、薬剤師がそういう考えを植え付けてしまった結果でしょうね、本来やるべき仕事ができていない場合もありますね。

Interviewer―そこをどう改善していこうと伊藤先生は考えていらっしゃいますか?

伊藤先生:まずはその必要性を感じてくれる薬剤師を増やすことからはじめていく必要があると思います。厚労省も地域住民の健康を管理していく「かかりつけ医」「かかりつけ薬局」「かかりつけ薬剤師」が必要だという方針を出しています。

喫茶店に行く感覚で薬局に来て自分の体調を気軽に相談し、それに対してアドバイスできる環境ができれば良いのではないかと思っています。

実際に福井県では一つのクリニックが中心となり、商店街の一角にカフェを設けて、地域の人たちの医療拠点としている実例があります。小さな単位でもよいので、地域と一丸になる取り組みが必要と考えます。

Interviewer―それはいいですね!進めましょう!

伊藤先生:でも実際には場所や人という基盤がないと動けない。

まずは賛同し動いてくれるつながりを構築する必要があると考えます。あとは、社内で働く者のコミュニケーション能力を向上していくことも必要であると考えます。

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薬剤師に向いている人とは。 男性脳?女性脳?

Interviewer―やはり、患者さんと直接関わるお仕事なので、コミュニケーション能力について、大学ではどのような教育がなされているのですか?

網岡先生:本来であれば、育ってくる環境の中で自然に備わっているべきことなのですがなかなか難しいようで。大学でも実際に今はコミュニケーション学というカリキュラムがあったり、模擬体験をしたりと力を入れています。

Interviewer―では学生を見ていて、薬剤師として成長するなという人はどんな人だとお考えですか?

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網岡先生:結局、「優しい人」ですね。

女性と男性で一般的に言われている能力の特徴ですが、何か問題が起きた時に女性はまず共感する、男性は解決のために動くという違いがあります。薬剤師は共感だけしていても解決できないのですが、ただ解決を考えて正論だけを述べても患者さんは突き放された気分になるでしょう。話も出来ない状態の患者さんに、症状を聞き出すために何度も何度も質問する薬剤師は優しくないですよね?

大前提として共感できて、問題解決のために突き詰められる能力を持った人を育てなくてはいけないのですよ。

過去に自分の教えている学生にいたのですが、学校の試験はいつもギリギリ、でも現場に立って相手のためにと思うとすごく勉強できるのです。誰かのためならがんばれる、「優しい人」が医療に関わる薬剤師としてとても必要とされる人材なのです。

Interviewer―なかなか難しいことですね。

網岡先生:確かに。たくさんのことを要求されていると思います。(書籍でぎっしり詰まった本棚を差して)これだけのことを全て勉強しても足りません。現役になっても勉強し続けなくては患者さんを救えない。勉強だけできても、患者さんとの接し方がぶっきらぼうでは決して良い薬剤師とは言えない。

でも、最初から出来なくても良いのです。ぶっきらぼうでも経験していけば、コミュニケーションも気をつけて取れるようになっていきます。それで患者さんが喜んでくれれば成功体験として次もやってみようと思います。その繰り返しで薬剤師も成長していくと思います。

どんな仕事でもそうかもしれませんが、薬剤師は相手を思いやることがとても大切です。気持ちさえもっていれば、あとのことは何とかなりますよ。

                         続く

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伊藤一弘
国立名古屋病院から始まり、病院での薬剤師業務に従事。平成27年3月独立行政法人国立長寿医療研究センター薬剤部薬剤部長を定年退職し、マイタウン薬局へ。現在はマイタウン薬局顧問、新しい取り組みへの足がかりとして様々な活動を行っている。
趣味:釣り、スポーツ観戦、映画鑑賞
モットー:和

網岡克雄
金城学院大学の薬学部新設を手掛ける。大学教授である現在に至るまで、医薬品メーカー、救命救急センター、厚生省、調剤薬局など多くの経歴を持ち、様々な現場で薬剤師として活躍。
趣味:ゴルフ、合唱(栄ミナミ男声合唱団所属)
モットー:人生で起こる全てのことは、ベストのタイミングでやってくる(良いことも悪いことも)会うべき人に会い、行くべきところへ行ってベストを尽くす、これが人生。

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